近年、社会実装・活用で注目を集めているAIの主な用途には、画像認識、検索、時系列分析、音声認識もあり、それぞれ注目されますが、人間活動との接点という意味では、翻訳などの自然言語処理の分野も重要であり、期待されるところです。弊社では、この機械翻訳技術についても、調査研究に取り組んでおります。
ここでは、昨年度(2020年度)特許庁が実施し弊社が担当した「令和2年度特許出願技術動向調査―機械翻訳―」についてご紹介致します。本件は、日経産業新聞電子版11月11日「機械翻訳の特許、米IBMが突出 追うNTTや富士通」でも紹介されているように、ニューラルネットワーク技術を活用した、「ニューラル機械翻訳」と呼ばれる方式が2014年に登場し、その後、性能が格段に向上したことで、一般にも話題を呼ぶことになった機械翻訳技術に関して、特許出願技術動向調査を行ったものです。詳しくは、特許庁報告書をご参照下さい(結果概要)。
国内でも外国人と接する機会が増え、ますますグローバル展開が加速する中で、日本人が言語の壁を越えてグローバルに活躍しやくする環境を整える上で重要な技術と言え、また、世界の言語の中での日本語の特殊性という観点からも、日本における技術開発が重要な分野です。
特許調査でその状況について見ると、新たな方式であるニューラル機械翻訳に関する特許は、米国や中国の件数が多く、増加率も高くなっているのに対し、日本の件数増加は遅れている状況にあるのが実態のようです。
総務省のグローバルコミュニケーション計画2025では、機械翻訳においてより文脈や話者の意図を汲み取ることや、リアルタイムに機械翻訳を活用する同時通訳の実現が目指されています。今後は、こうした意味理解やリアルタイム性を踏まえた機械翻訳技術の分野における日本企業のさらなる活躍が期待されます。