米国では「修理する権利」の法制化が議論されていて、いくつかの州では既に議会での合意が得られているようです。「修理する権利」では、消費者が家電製品等を修理できるように製造者に対して修理マニュアルと修理部品の提供、さらには修理しやすい製品の設計を求めています。製造者側は安心・安全の観点からどちらかというとこの要求には否定的ですが、欧州においても「修理する権利」はエコデザイン指令の中で検討されています。(例えば、https://www.positive.news/economics/claiming-the-right-to-repair/)グリーン政策、循環経済の実現等が政策としての位置づけですが、消費者は経済性の観点でだけ権利を求めています。関連して北欧3国の携帯電話に関する循環経済のレポートがNordic Councilから公開されています。携帯電話産業における、修理、再生、中古販売、製造業者との関係、課題などがよく分析されています。(David Watson, et.al “Circular Business Models in the Mobile Phone Industry”, Nordic Council of Ministers, TemaNord 2017:560)
さて、最近ではデスクトップPCは10年以上問題なく動き、その寿命は基本ソフトウェアのサポート期限、例えば2020年に終了するWindows 7、一方、スマートフォンは搭載されているAPUの性能が十分に上がったので、その寿命は性能問題ではなく搭載されているリチウム電池の劣化度合で決まるようです。現在はインターネットによってほとんどの製品の修理方法が実演解説つきで公開されています。必要な工具、部品もインターネット通販で容易に手に入ります。(例えば、https://jp.ifixit.com/)専用工具があれば細かい作業を注意深く進めてスマートフォンに固定された電池の交換ができます。但し、安心・安全の観点で触れることができない部分もあるので家電製品等での修理する権利の行使は要注意です。プラス、メーカー保証も無くなります。修理の権利についてはOpen Repair Allianceがコンソーシアム活動を進めています。
藤井伸朗:NTT研究所、NTTグループ会社において通信網オペレーションシステム等の研究開発、国際標準化に従事。2014.7よりサイバー創研に勤務。電子情報通信学会フェロー。